
- 肩が痛くて腕を上げにくい
- 夜になると肩がズキズキして眠れない
- 腱板損傷と言われたけれど、腱板断裂とは違うの?
- このまま放置して自然に治るの?
こんな疑問や不安を持っている方は多いと思います。
今回は、肩の腱板損傷と腱板断裂について、症状、チェック方法、自然治癒するのか、放置するとどうなるのか、病院での検査、保存治療、手術、そしてリハビリまで順番にお話しします。
最初に一番大事なことをお伝えします。
腱板断裂が見つかったからといって、全員が手術になるわけではありません。
反対に、「腕が上がるから腱板断裂ではない」とも言い切れません。
腱板損傷では、画像だけではなく、痛み、筋力、断裂の大きさ、外傷の有無、生活や仕事、スポーツで何に困っているのかまで含めて治療方針を考えます。(1)
ここを最初に知っておくだけでも、少し安心できると思います。
CONTENTS目次
CHAPTER01
腱板損傷・腱板断裂とは
腱板損傷とは?肩のどこが傷んでいる?
腱板損傷とは、肩を安定させたり腕を動かしたりする腱板にトラブルが起きた状態を表す言葉です。腱の傷みから部分断裂、全層断裂までさまざまな病態が含まれます。
そもそも、「腱板って何ですか?」というところからですよね。
私は患者さんには、「肩の中にある、ひもみたいなものです」と説明しています。
肩は、大きな筋肉だけで腕を持ち上げているわけではありません。腱板が腕の骨を肩関節の中で安定させながら、腕を上げたり、回したりする動きを助けています。いわば、何本かのひもで腕の骨を支えながら動かしているイメージです。
この腱板に負担がたまり、腱に痛みや変化が起きたり、一部または全部が切れたりするものを広く「腱板損傷」と呼ぶことがあります。
2025年のJOSPTガイドラインでも、腱板腱障害だけでなく部分断裂まで含めて、非手術治療やリハビリの考え方が整理されています。(2)
腱板損傷と腱板断裂の違いは?

腱板損傷は腱板に起こるトラブルを比較的広く表す言葉で、腱板断裂は腱の線維が部分的または全層にわたって断裂した状態を指します。
つまり、腱板損傷という大きなくくりの中に、腱板断裂があると考えると分かりやすいかと思います。
ただし、実際の医療現場では診断名の使い方に多少幅があります。たとえば腱の一部だけが傷んでいる状態を「部分断裂」と説明する場合もあれば、「腱板損傷」という言葉で説明される場合もあります。
ここで大事なのは、名称そのものより、「どこが、どの程度傷んでいるのか」「症状にどれくらい影響しているのか」です。
CHAPTER02
症状とセルフチェック
腱板損傷・腱板断裂の症状
腱板損傷や腱板断裂では、肩を動かしたときの痛み、夜間痛、腕の上げにくさ、筋力低下などがみられます。ただし、これらの症状だけで腱板断裂と診断することはできません。
よくある症状は、
などです。
腕を上げると肩が痛い
- 前から上げると痛い
- 棚に手を伸ばしたときにズキッとする
- 洗濯物を干すのがつらい
こうした訴えはよくあります。髪を洗う、服を着る、上の棚から物を取るといった何気ない動作で肩の痛みを感じることもあります。
ただし、腕を上げたときの痛みは腱板断裂だけに起こる症状ではありません。
夜に肩が痛む「夜間痛」
腱板損傷でよく聞くのが、
- 夜になると痛い
- 寝返りをするとズキッとして起きる
という症状です。横向きで痛い側を下にすると肩に負荷がかかったり、寝ている姿勢によって痛みが目立つことがあります。
ただし、夜間痛=腱板断裂ではありません。ほかの肩の病気でも起こります。
夜間痛が続いて眠れないほどであれば、症状だけで我慢せず整形外科へ相談してください。
腕が上がらない・上げにくい
- 腱板が切れたら、腕は上がらないんですよね?
よく聞かれます。実はそうとも限りません。
腱板の一部が切れても、残っている腱やほかの筋肉が頑張ってくれれば、腕を上げられる人もいます。
つまり、腕が上がる=腱板断裂ではないとは言えません。
肩に力が入らない
痛みより、「力が入らない」ことが目立つ人もいます。
- 髪を洗えない
- 服を着るのが難しい
- 物を持ち上げると腕が落ちてしまう
こうした明らかな筋力低下がある場合、とくにケガの後から急に起きたのであれば、早めの評価が必要になることがあります。
引っかかる・ゴリゴリする
腕を上げる途中で、
- 引っかかる
- 滑らかに動かない
- ゴリゴリする
と感じる人もいます。ただし、音や引っかかりだけで腱板断裂とは判断できません。
腱板断裂の症状は3パターン|腕が上がる人もいる

腱板断裂の症状は人によってかなり違います。分かりやすく3つに分けてみましょう。
パターン1:痛いけれど腕は上がる
- 切れているのに上がるんですか?
上がることがあります。ロープが一部傷んでいても、残っているロープやほかの筋肉が頑張れば腕を持ち上げられるからです。
ですから、「上がるから大丈夫」と自己判断しないことが大切です。
パターン2:上げる途中で引っかかる
途中までは動く。でも、ある角度から動きにくい。こうした症状が出ることがあります。
腱板の機能が落ちると、肩の中で腕の骨を安定させながら動かす働きがうまくいかない場合があります。
パターン3:自分では上がらないが、人に上げてもらうと上がる
ここは大事です。
自分の力では腕を上げられない。でも、反対の手や他人に持ち上げてもらえば上がる。
この場合、肩を動かす筋肉や腱の機能が大きく低下している可能性があります。
とくに転倒や事故の後から急にこうなった場合は、早めに整形外科で確認してください。
腱板損傷・腱板断裂をチェックするテストはある?
自宅でできるテストだけで腱板損傷や腱板断裂を確定することはできません。ただし、腕の動き、痛む角度、筋力低下、左右差を確認することは受診時の手がかりになります。
自宅でできる「ゆっくり腕上げチェック」
前ならえの状態から、無理のない範囲で腕をゆっくり頭の上へ上げてみてください。
このとき、
- 特定の角度で強く痛む
- 途中で力が抜ける
- 左右で上がる高さが明らかに違う
- 途中で引っかかる
といったことがないか確認します。
ただし、痛い角度があれば腱板断裂確定というテストではありません。
腕が上がれば腱板損傷ではない?
いいえ。先ほどお話ししたように、腱板断裂があっても腕を上げられる人はいます。反対に、腕が上がらない原因も腱板断裂だけではありません。
セルフチェックは、診断するためではなく、自分の状態を整理するために使ってください。
痛みを我慢して何度も試す必要はありません。
腱板損傷は見た目で分かる?
腱板損傷や腱板断裂は、肩の見た目だけで基本的に診断できません。
- 右肩だけ形が違う
- 肩が少しへこんでいる
ということがあったとしても、それだけで腱板断裂とは言えません。
反対に、見た目が普通でも腱板断裂があることはあります。
そのため、診断では症状、診察、必要な画像検査を組み合わせます。
CHAPTER03
原因・経過と注意点
腱板損傷・腱板断裂はなぜ起こる?
腱板断裂の原因は、大きく分けると「ケガによる外傷」と「年齢などに伴って徐々に傷む変性」の2つがあります。
ケガで急に起こる外傷タイプ
たとえば、
- 転倒した
- 手をついた
- 重い物を持った
その直後から急に腕が上がらなくなった。こういうケースです。
少しずつ進む変性タイプ
一方、
- 転んだ覚えはない
- 何か月も前から少しずつ痛い
- 最近になって肩の力が落ちてきた
というケースもあります。このような腱板断裂では、年齢に伴う腱の変化や長期間の負荷などが関係します。
腱板損傷は自然治癒する?腱板断裂は自然に治る?

「痛みが良くなること」と「断裂した腱が画像上元通りになること」は分けて考える必要があります。
保存治療によって、肩の痛みや機能が改善する人はいます。しかし、痛くなくなった=断裂がなくなったとは限りません。
痛みがなくなれば治ったということ?
必ずしもそうではありません。断裂が画像上残っていても、痛みがほとんどなく日常生活を送れる人はいます。逆に、断裂がそれほど大きくなくても強い痛みを感じる人もいます。
腱板断裂は自然にくっつく?
成人の変性した全層断裂では、症状が改善しても構造的な断裂が残ることがあります。
アメリカの整形外科学会でも、症状のある全層断裂に対する理学療法で患者さんの症状や機能が改善する一方、長期的には断裂サイズや筋肉の変化が進む可能性が整理されています。(1)
ですから、「自然治癒するか?」という質問には、症状の改善は期待できる場合がある一方、断裂そのものの経過は別に考える必要があるという答えになります。
腱板断裂を放置するとどうなる?

腱板断裂を放置しても、すべての人で悪化するわけではありません。ただし、変性断裂の一部では時間とともに断裂が広がったり、筋肉の状態が変化したりすることがあります。(1)(3)
50人の無症候性全層断裂を3年間追跡した研究では、18人に症状が出現し、症状が出たグループでは断裂サイズの増加も大きくなっていました。(3)
また、変性腱板断裂の自然経過をまとめたレビューでも、断裂拡大や筋萎縮、脂肪変性などが経過中に起こり得ることが整理されています。(4)
ただし、腱板断裂が見つかった=必ず進行するではありません。
痛くない腱板断裂もある
痛くない腱板断裂もあります。実際、画像検査で偶然見つかることがあります。先ほどの研究でも、3年経っても無症状のままの人がいました。(3)
つまり、「放置したら絶対悪化する」と不安をあおるのも正しくありません。
症状、断裂の大きさ、年齢、筋力、生活状況などを見ながら必要に応じて評価していくことが大切です。
腱板損傷・腱板断裂でやってはいけないこと

腱板損傷だから全員に共通する「絶対禁止」があるわけではありません。ただし、痛みを我慢した高負荷運動や、自己流で急に強いトレーニングを行うことには注意が必要です。
痛みを我慢して重い物を持つ
- 動かした方がいいんですよね?
だからといって、強い痛みを我慢して重い物を何度も持つ必要はありません。とくに外傷後に急な筋力低下があるなら、まず原因を確認しましょう。
いきなりインナーマッスルを強く鍛える
腱板は肩の深い部分で働くため、「インナーマッスルを鍛えればよい」と思うかもしれません。
でも、腱板損傷=とにかくゴムチューブではありません。痛みや肩の可動域、筋力、損傷状態を確認してから段階的に負荷を上げます。
痛いテストを何度も繰り返す
毎日何度も、
- 今日は上がるかな
- ここまで行くと痛い
と確認する必要はありません。痛みを起こす動作を繰り返すことで負担になることがあります。
反対に、一切動かさない
これも注意です。保存治療では肩の動きや筋力を保つことが重要になる場合があります。
ただし、手術後は別です。修復した腱を守る必要があるため、術後は主治医の指示を優先してください。
CHAPTER04
受診の目安と検査
腱板損傷はいつ病院へ行く?
次のような症状があれば、自己判断で長く様子を見るより早めの受診をおすすめします。
急に腕が上がらなくなった
昨日までは普通だったのに、突然上がらなくなった。とくに転倒や事故の後なら早めに確認したい症状です。
夜間痛が続いて眠れない
夜の痛みが続き、睡眠に影響している場合も受診の目安です。
明らかに力が落ちた
物を落とす。腕を支えられない。髪を洗うのも難しい。こうした筋力低下も評価が必要です。
しびれや発熱がある
しびれ、手の動かしづらさ、発熱などがあるなら、腱板断裂以外の問題も含めて確認する必要があります。
腱板損傷はレントゲンやMRIで分かる?
腱板損傷の診断では、問診や診察に加えて、必要に応じてレントゲン、超音波、MRIなどを使います。MRIは臨床診察や単純X線と組み合わせて腱板断裂を評価する有用な検査として、アメリカの整形外科学会ガイドラインでも位置づけられています。(1)
レントゲンで腱板は見える?
腱板そのものはレントゲンでは直接評価しにくいです。
ただし、
- 骨の状態
- 関節の変化
- 石灰化
- ほかの原因
などを確認するために役立ちます。
エコーでは何が分かる?
超音波、いわゆるエコーでも腱板を評価できます。肩を動かしながらリアルタイムで確認できるのが特徴です。
MRIでは何を確認する?
MRIでは、
- 断裂があるか
- どこが切れているか
- どのくらい広がっているか
- 周囲の筋肉や組織はどうか
などを評価します。
ただし、ここでも、MRIで腱板断裂が見つかった=手術ではありません。画像と症状、筋力、生活の困りごとを合わせて判断します。
CHAPTER05
治療とリハビリ
腱板損傷・腱板断裂の治療

治療は大きく、手術をしない保存治療と、切れた腱を修復する手術治療に分かれます。
- 腱板断裂なら手術ですか?
不安になりますよね。結論として、全員が手術になるわけではありません。
アメリカの整形外科学会最新版でも、非手術治療による症状改善と、断裂の構造的な経過、手術による修復などを患者さんごとの条件に応じて検討する形になっています。(1)
腱板損傷・腱板断裂の保存治療
保存治療では、痛みを下げながら、動ける肩を作ることを目指します。
痛み止めや湿布
湿布や痛み止めは、「切れた腱をくっつける薬」ではありません。痛みを和らげて生活しやすくしたり、リハビリを進めやすくしたりするための手段です。
私はよく、治す魔法ではなく、動ける状態を作る道具と説明します。
腱板損傷・腱板断裂のリハビリ
保存治療では、リハビリが大切な選択肢になります。ただし、いきなり筋トレを始めるわけではありません。
リハビリ① 痛みを整える
まずは強い痛みを落ち着かせながら、動ける範囲を確認します。
- 痛い
- 動かさない
- 固くなる
- さらに痛い
という流れに入らないようにします。
リハビリ② 肩を固めない
痛みが増えすぎない範囲で肩の動きを保ちます。
運動後に痛みがずっと増え続けたり、翌日まで強く悪化したりするなら、負荷が強すぎる可能性があります。
リハビリ③ 肩甲骨も動かす
- 肩なのに背中?
と思いますよね。でも肩はチームプレーです。腕の骨と肩甲骨が一緒に動くため、肩甲骨の動きも重要です。
リハビリ④ 腱板を少しずつ鍛える
状態が整ってきたら、腱板や周囲の筋肉を少しずつ鍛えます。ゴムチューブなどを使うこともあります。
ただ、強ければ強いほど効果的というわけではありません。
腱板損傷ではインナーマッスルトレーニングをした方がいい?
腱板は肩の深い部分で働く筋腱群ですが、「腱板損傷ならインナーマッスルだけ鍛えればよい」という考え方は単純すぎます。
まず、
- 痛みはどうか
- 肩は動くか
- 筋力はどの程度か
- 損傷の状態はどうか
を見ます。そのうえで、肩甲骨周囲筋を含めた肩全体の機能を段階的に戻します。
腱板損傷のリハビリで禁忌・注意する動き
- 腱板損傷で禁忌の運動は何ですか?
よく検索される疑問ですが、一律には決められません。
保存治療の場合
- 強い痛みを我慢する高負荷トレーニング
- 急激な負荷増加
- 痛みが大きく増える動作
こうしたものは避けた方がよい場合があります。
手術後の場合
ここは別物です。修復した腱を骨へくっつけていく時間が必要なので、手術直後に自己判断で腕を上げたり、重い物を持ったりするのは避けます。
- 友達はもう動かしていた
- ネットでは○週から筋トレと書いていた
という情報を自分にそのまま当てはめないでください。
腱板損傷に肩サポーターは必要?
サポーターが役立つかどうかは、症状や目的によって変わります。
装着しただけで腱板損傷が治るわけではありません。また、自己判断で長期間肩を固定すると、肩の動きが落ちる可能性もあります。
手術後に使うスリングや外転装具とは目的も違うため、必要性は主治医や理学療法士と相談してください。
腱板損傷はマッサージで治る?
マッサージだけで、断裂した腱が元通りにつながるわけではありません。
肩周辺の筋肉の緊張や症状への対応として使われることはありますが、「痛い場所を強く揉めば治る」というものではありません。
まず原因と病態を確認することが先です。
腱板断裂で注射をすることはある?
痛みが強くてリハビリが進められないときに、注射を検討する場合があります。
ただし、注射で腱板断裂が全部解決するわけではありません。
アメリカの整形外科学会最新版では、単回の副腎皮質ステロイド注射は短期的な痛みや機能の改善を目的として検討できる一方、将来修復術を行う可能性なども踏まえて使う必要があります。(1)
つまり、リハビリを進めるための補助手段の一つと考えてください。
CHAPTER06
手術と手術後のリハビリ
腱板断裂で手術を考えるのはどんな場合?
手術を考える条件は一つではありません。
たとえば、
- 転倒後から急に腕が上がらない
- 明らかに筋力が低下した
- 大きな断裂がある
- 保存治療を行っても生活の支障が強い
- 仕事やスポーツで高い肩機能が必要
こうしたことを総合して判断します。「3か月経ったから絶対手術」ではありません。
腱板断裂の手術|鏡視下腱板修復術とは?
腱板断裂では、関節鏡という細いカメラを使って切れた腱を骨へ修復する、鏡視下腱板修復術が行われることがあります。
- 肩の中で何をしているのか分からなくて怖い
という方もいますよね。イメージとしては、切れたゴムひもを、元々付いていた骨へ縫い戻す手術です。
関節鏡とは?
「鏡」と言いますが、実際は細いカメラです。肩に小さな切開を作り、カメラや器具を入れて中を確認します。
アンカーと糸で腱を骨に戻す
骨側へアンカーという固定材料を設置します。船のいかりをイメージすると分かりやすいです。
そこから出ている糸を腱へ通し、切れた腱を骨へ引き寄せて固定します。つまり、元の場所へお裁縫するようなイメージです。
縫った直後はまだ治っていない
これが非常に大切です。手術が終わった瞬間、「元の肩に戻った」わけではありません。
腱と骨が生物学的に治癒する時間が必要です。だから、手術後のリハビリが大事なんです。
腱板断裂の手術後に装具を使う理由
手術後は、修復部を守るためにスリングなどを使うことがあります。
場合によっては脇を少し開いた外転位で支える装具を使用します。
「固定しているからリハビリをサボっている」わけではありません。守ることもリハビリの一部です。
装具の期間は、断裂の大きさ、腱の状態、修復方法などによって変わります。
腱板断裂の手術後リハビリ|守る→動かす→鍛える

腱板修復術後は、
- 守る
- 受け身で動かす
- 自分で動かす
- 鍛える
という流れで考えると分かりやすいです。
①修復した腱を守る
- 急に腕を上げる
- 重い物を持つ
- 強くひねる
- 自己判断で装具を外す
こうしたことは時期によって避けます。
②受け身で動かす
次は、自分の筋力を強く使わず、反対の手やリハビリスタッフの助けを使って肩を動かします。これを他動運動といいます。
③自分で腕を動かす
修復部の経過を見ながら、自分の力で腕を動かす段階へ進みます。
④筋力を戻す
その後、腱板、肩周囲筋、肩甲骨周囲筋などの筋力を段階的に戻します。
腱板断裂の手術後は早く動かした方がいい?
早期リハビリは一部の時点で可動域の回復を早める可能性がありますが、「全員が早く動かすほどよい」とは言えません。
2021年の系統的レビューでは20件のRCT、1,841人を解析し、早期リハビリで一部の可動域が早く回復する一方、痛みや機能の多くの評価では大きな差がみられませんでした。(5)
2023年の13件、1,082人を対象としたRCTメタ解析でも、早期運動群で一部の可動域が良好でしたが、再断裂率には有意差が示されませんでした。(6)ただし、この2023年論文には2024年に訂正が公表されています。(7)
だから結論は、早ければ早いほど正解でも、遅ければ遅いほど安全でもありません。
断裂の大きさ、腱の質、修復方法、患者さんの状態を見て決めます。
腱板断裂の術後に再断裂したときの症状は?
術後に肩が痛いからといって、再断裂とは限りません。
一方、
- 一度改善していたのに急に強い痛みが出た
- 新しい外傷後に筋力が大きく落ちた
- 以前できていた動きが急にできなくなった
という変化があれば、主治医へ相談してください。
再断裂かどうかは、症状だけではなく、必要に応じて診察や画像検査で確認します。
腱板断裂が再断裂する原因は?
再断裂は一つの原因で決まるわけではありません。
- 断裂サイズ
- 腱の質
- 筋肉の状態
- 年齢などの患者背景
- 生物学的な治癒
- 修復方法
- 術後の負荷
こうした複数の要素が関係します。
ですから、「再断裂したのはリハビリを頑張らなかったから」と患者さん自身を責める必要はありません。
腱板損傷・腱板断裂はどれくらいで回復する?
回復期間は、全員同じではありません。
- 保存治療か手術か
- 部分断裂か大きな全層断裂か
- 腱や筋肉の状態
- 年齢
- 仕事やスポーツでどこまで戻りたいか
これらで変わります。
手術後も、
- 顔を洗えるようになる時期
- 服を楽に着られる時期
- 仕事へ戻る時期
- 筋トレを始める時期
- スポーツへ戻る時期
は同じではありません。
ですから、腱板断裂の回復は月単位で考えるくらいがよいでしょう。周りの人と比べて焦らないでください。
まとめ|腱板損傷・腱板断裂は「症状+診察+画像」で考える

腱板損傷にはさまざまな状態があり、その中には部分断裂や全層断裂があります。
よくある症状は、
- 肩を動かしたときの痛み
- 夜間痛
- 腕の上げにくさ
- 筋力低下
などです。でも、症状だけで腱板断裂とは診断できません。
反対に、腱板断裂があっても腕が上がる人、痛くない人もいます。
セルフチェックは目安です。診断では問診や診察を行い、必要に応じてレントゲン、エコー、MRIなどを使います。
そして、腱板断裂=全員手術でもありません。
保存治療では、痛みを整えながら肩の動きや筋力を取り戻していきます。手術が必要な場合には、関節鏡を使ってアンカーと糸で腱を骨へ戻す腱板修復術を行うことがあります。
そして手術後は、
- 守る
- 動かす
- 自分で動かす
- 鍛える
と段階的にリハビリを進めます。
一番覚えておいてほしいのは、
ネットで見た「何週間」「この運動が正解」という情報を、自分の肩にそのまま当てはめないこと。
腱板損傷は、断裂の大きさや原因、生活背景によって治療が変わります。
- 急に腕が上がらなくなった
- 転倒後から明らかに力が入らない
- 夜間痛が続いて眠れない
そんな場合は、一人で我慢し続けず整形外科へ相談してください。
原因が分かれば、そこから自分に合った治療を一緒に考えることができます。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。治療については診察を受けたうえで主治医と相談してください。
よくある質問
腱板損傷と腱板断裂の違いは何ですか?
腱板損傷は腱板に起きたトラブルを比較的広く表す言葉で、腱板断裂は腱の線維が部分的または全層にわたって断裂した状態です。
腱板損傷の症状は何ですか?
肩を動かしたときの痛み、夜間痛、腕の上げにくさ、筋力低下などがあります。ただし、症状だけでは診断できません。
腱板損傷を自分でテストできますか?
腕をゆっくり上げ、痛む角度、力が抜ける場所、左右差などを確認することはできます。ただし、セルフテストだけで腱板損傷や腱板断裂を確定することはできません。
腱板損傷や腱板断裂は自然治癒しますか?
保存治療で症状や機能が改善する人はいます。ただし、症状が改善することと画像上の断裂が元通りになることは別です。
腱板損傷はレントゲンで分かりますか?
腱板そのものはレントゲンで直接評価しにくいため、必要に応じてエコーやMRIを使用します。レントゲンは骨や関節の状態、ほかの病気の評価に役立ちます。
腱板損傷に肩サポーターは必要ですか?
症状や目的によります。サポーターだけで損傷が治るわけではなく、自己判断で長期間固定することが適切とは限りません。
腱板損傷はマッサージで治りますか?
マッサージだけで断裂した腱が修復されるわけではありません。周囲の筋肉の症状への対応として使われる場合はあります。
腱板損傷ではインナーマッスルを鍛えた方がいいですか?
状態に合えば腱板や肩周囲筋のトレーニングを行いますが、いきなり強い負荷をかけるのではなく、痛みや可動域を確認しながら段階的に進めます。
腱板断裂の術後に肩が痛いと再断裂ですか?
痛みだけでは再断裂とは判断できません。急な筋力低下、新しい外傷後の悪化などがあれば主治医へ相談し、必要に応じて画像検査で評価します。
引用文献
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Rotator Cuff Injuries: Evidence-Based Clinical Practice Guideline. AAOS; 2025.
- Desmeules F, Roy JS, Lafrance S, et al. Rotator Cuff Tendinopathy Diagnosis, Nonsurgical Medical Care, and Rehabilitation: A Clinical Practice Guideline. J Orthop Sports Phys Ther. 2025;55(4):235-274.
- Moosmayer S, Tariq R, Stiris M, Smith HJ. The natural history of asymptomatic rotator cuff tears: a three-year follow-up of fifty cases. J Bone Joint Surg Am. 2013;95(14):1249-1255.
- Codding JL, Keener JD. Natural History of Degenerative Rotator Cuff Tears. Curr Rev Musculoskelet Med. 2018;11(1):77-85.
- Mazuquin B, Moffatt M, Gill P, et al. Effectiveness of early versus delayed rehabilitation following rotator cuff repair: systematic review and meta-analyses. PLoS One. 2021;16(5):e0252137.
- Hu CW, Tsai SHL, Chen CH, et al. Early versus delayed mobilization for arthroscopic rotator cuff repair: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Musculoskelet Disord. 2023;24:938.
- Hu CW, Tsai SHL, Chen CH, et al. Correction: Early versus delayed mobilization for arthroscopic rotator cuff repair. BMC Musculoskelet Disord. 2024;25(1):974.